ツバキとキキョウ
「ウィアラさんよ〜、バイトでも雇ったらどうだ?」
艶のある声が聞こえカウンターを覗くと、銀髪の男性が座っていた。
愁いを帯びた切れ長の瞳がこちらを一瞥し、同性なのに思わず色気を感じてしまった。
ふと、ドアベルがカラリと音を立て、客の入りを報せた。そろそろディナーの時間になるのだろう。
「そうね、アタシもそういう歳かしら」
「いや全然そう見えねぇけどな、アンタなら抱い…イテッ」
「ツバキさん、ナンパもほどほどにしてくださいね?」
先程の客は、この拳を軽く握った青年だったようだ。
浅黒い肌に凛々しい容貌をもち、半ば呆れ顔を浮かべている。
ツバキと呼ばれた男は、殴られた所を摩りながら口を開いた。
「キキョウちゃん! 折角良い所だったのに」
「やめてくださいよ全く。今晩の宿が無くなってもいいわけ?」
「ああ、その時は女性の家に…」
さらに威力のある拳が、ツバキに落ちた。
「ふふ、相変わらず面白い人達だこと。…そろそろ、お客さんが増える頃かしらね」
ウィアラが調理台に皿を並べ始めた。
自分はというと、酒場の隅で先程の料理をつつくことに専念した。
食材自体の美味さに舌鼓をうつ。締めの焼きポムは、目を閉じてうっとりするほどの出来栄えだった。
ツバキ・シュネーさんとキキョウ・シグレさん( @imunoura20 )をお借りしました!