解かれていく
のんびりと歩きながら感じた。
此処は小さいながらも活気のある国だった。
皆生き生きとした表情で働き、豊かな資源に溢れている。
自国は…いや、故郷はどうだったろうか。
断崖絶壁と森林に囲まれた中、殺伐とした空気が流れていたように思う。
死ぬか否かを常に考えていた。
他人から貰った物には毒や罠がないか確認していた。
この国にきてからどうだろう。
ウィアラのベラスシチュー、リズィから貰ったポム。
今までの警戒心が嘘のように解かれてしまっている。
そして、この国自体に興味が湧いている自分が居た。
大好きなアイスバーグ家の仲間達と過ごした日々を、決して忘れることはないだろう。
だけれど。
「あいつらさえ来なければ…」
もう少しこの国に居たい、なんて。
手に持ったポムの実を眺める。
自分も生命の輝きを灯されたような気がした。
それから暫く、国中を散策した。
噴水広場、農場通り、魔銃師会の建物に、旧市街…。
ドルム山という所もあるようだが、さすがに歩き疲れてしまった。
(図書室とドルム山は明日かな)
帰り際にヤーノ市場に立ち寄り、食材を買い込んだ。
久しぶりに、料理でもしようか。