ウィアラによれば、寝場所は酒場の二階で、自由に使えるとのことだった。(まぁ随分と、優しい国だね…)ベンチを見つけ、腰掛ける。夜空を仰ぐと、薄い雲に覆われ星の瞬きが微かに見えた。額に手をあて、前髪をかきあげた。ふと、視界に橙色が映った。視線をや…
「…ここなら、一旦大丈夫かな」土砂降りの雨の中、ふらついた足取りで入国申請所を探す。(酒場か…)石畳の硬さが、底の薄くなった靴によく伝わった。酒場の灯りが雨でぼやけながらも視界に入った。(ああ、間に合わな——)自分の倒れる音が、聞こえた気がした。…
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